GIGAZINEの記事について思うこと

最近寒いですね。
いつものようにボケーッっとTwitterを見ていたところ、以下のGIGAZINEの記事を見つけました。
gigazine.net
(おことわり:私は電気どころか英語も不得意なので正確性に欠けるかもしれません。詳細は専門家にあたってください。ご指摘はふわふわ言葉でお願いします。ホバーランランルーと言われると私の足の小指がタンスの角にぶつかります。)

電力と電力量間違えている

先日NHKの記事について批評(になってるのかな?)を投稿しましたが、その記事で指摘したことと同じ表記を見つけてしましました。
あ、先日書いた記事というのはこちらです。
zweiglinie.hatenablog.com
拙作ですがよければどうぞ。
さて、問題の一文を引用します。

さらに、ティハド氏らが設計した回路では、ダイオードで電流の方向を切り替えることで、供給される電力量が減少するのではなく増加するように設計されています。

ええ、当然ながら「電力」の誤字です。弱電で電力量の増加が画期的!って言うのは蓄電池でもなければ基本おかしいです。コンデンサだったら静電容量と言いますからね。
電力と電力量の違いについては詳細は以下のサイトを参考にしてください。
kWとkWhは何が違うんでしょうか? - よくある質問 | 太陽生活ドットコム

引用元を確認してみよう

アメリカの大学が間違えるとは思いませんが、もしかしたら引用元が「電力量」と記載していて直訳してしまったのかも?と思い、GIGAZINEが載せている出典元を確認してみました。
https://journals.aps.org/pre/abstract/10.1103/PhysRevE.102.042101journals.aps.org
news.uark.edu
前者の出典は論文がダウンロードできるサイト(日本でいうところのJ-STAGEのようなサイトですかね?)に載っている概要(abstract)で、後者は論文を発表した大学であるアーカンソー大学のサイトです。本来なら英文を全て意味の通る日本語に訳するべきではあるのですが、私の拙い英語力では精度も低い上に時間がかかってしょうがないです。ニートでも時間は有限ですからね。
ということで電力量の英訳である「electrical energy」と単にエネルギーの英訳である「energy」をctrl+Fで検索してみました。

結果
  • 前者の出典:どちらも0件
  • 後者の出典:energyのみ7件ヒット

後者の出典でヒットしたenergyは「energy-harvesting」または「harvesting energy」という英単語・節での記述であるため、エネルギーハーベスティングのことであり、電力量とは直接的な関係はないです。つまりは「電力量」を直訳した文は存在しませんでした。
ということでGIGAZINEの記事中にある「電力量」は「電力」の誤字であることが分かります。

電力の大きさのことを電力量と言ってないか?

先日のNHKの記事もそうですが、電力の大きさのことを電力量と言っているのではないか?という仮説を立てました。今のところ立証する気はありませんし、立証したところでこのブログのネタにしかならないですが、いずれにせよ電力量の誤用がこれから出ないことを祈るばかりです。

「誘発」は適訳なのか

次の問題の一文です。

室温でグラフェンの熱運動が回路に交流電流(AC)を誘発することを発見。

電流を誘発ってなんじゃらほいという話です。恐らくはinduceを一般的な意味で訳したのでしょう。しかし、電気(物理)の専門用語としては「~を誘導する」という意味で訳されます。発電の原理で用いられるファラデーの電磁誘導はFaraday's law of induction(inductionはinduceを名詞化した単語)と言いますし、電車で使われる誘導電動機はinduction motor(略してIM)と言います。
さて、「交流電流を誘導する」という言い回しでは、専門的には意味の通る文になりましたが、一般的には分かりづらいままです。私の少ない脳みそを捻ってみたところ、「発電する」と言い換える方が理解しやすいのではないかと思いました。

「無限に電力を生成できる」は正しい意味なのか?

題名に関する野暮ったいいちゃもんです。
無限に電力を生成できる可能性がある回路はエネルギーハーベスティングのことを指しています。エネルギーハーべスティング(energy harvesting)は環境発電とも訳され、身の回りにある振動や騒音を収穫(harvest)し、エネルギー源として発電することを意味します。分かりやすいもので例えると、太陽光発電はエネルギーハーベスティングの一種です。ただし、再生可能エネルギーのような電力系統に接続するものではなく、電源プラグや充電池を付けることが困難なセンサなど、微小な出力での利用が念頭に置かれています。
さて、題名の表現は、無限の定義によっては正しいですが、題名のみではエネルギーハーべスティングのことは読み取れず、大袈裟なものに思えます。もちろん、記事で紹介されている技術は研究途上のものですから、「可能性」であることは間違いないのですが…

英語版ではどんな記述をしているか

このGIGAZINEの記事には英語版があります。
gigazine.net
不正確な日本語なのに機械翻訳にかけるって何を考えているのやら、というツッコミはさておいて、「電力量」と「~を誘発する」の英訳はどうなっているか確認してみます。

電力量

the amount of power

電力の量…かなり悩んだため合っているかどうかは保留にしました。前述のような「電力の大きさ」なら合っているのですが、「the amount of ~」に「~の大きさ」という意味が含まれているのかが分からないのです。

~を誘発する

Discovered that the thermal motion of graphene induces alternating current (AC) in the circuit at room temperature.

機械翻訳ですから「~を誘発する」をそのまま「induces」と訳しています。面白いことに英語版の方が正確な文になっています。やっぱり母国語が英語の方が得なのかな?

さいごに

このブログを書いている時に、英語もできる友達が「電源って意味なのに日本語の記事が意味不明な翻訳をしている」と愚痴を言っていたことを思い出しました。英語で発信された記事をそのまんま翻訳したような記事の翻訳は割と適当なことが多いです。このブログだってかなり適当ですけれども。技術系であれば尚更です。
極端なことを言えば、記事を読む人が出典元だけを読めば、こんな初歩的な誤字誤訳は起こらないのですが、私みたいな英語弱者や理科が苦手な工学弱者に情報格差をもたらしてしまいます。技術的な分野では、門外漢でも分かりやすく、かつ正確に報道することがマスコミの役割だと思っています。しかし、その役割を果たしているか疑問に思うメディアは少なくないです(超高温電流とかね)
GIGAZINEは誤訳や大袈裟な表現がどうやら多いようなので、今後とも注意したいところです。

蛇足

このブログをチンタラ書いていたらリニアに関する酷い記事が出てきました。鉄道電気技術に関するものなのでブログの格好のネタですが、Twitterやヤフコメで既に指摘されまくっているため、私の出る幕ではないかと思いました。単にやる気がないこともありますが、リニアのアレについては書きません。それにしても「超高温電流」って面白いことを言いますよね。