自工会の出した情報だけじゃ国民は判断できないんじゃね?

いえーいメリークリスマスち○こー!Zweiglinieです。
今回は日本自動車工業会のオンライン会見で出た試算に素人がツッコミを入れるという不毛な記事を書いていきます。結論は題名に書いてありますので、その前提で読み進めてもらえるとありがたいです。
(おことわり:自動車も電気も素人レベルの知識です。詳細は専門家にあたってください。ご指摘はふわふわ言葉でお願いします。ホバーランランルーと言われると私の胃腸が下痢を起こします。)

出典

この動画を見てもらうと話が早いです。
自工会 豊田会長が全面EV移行に懸念 小泉環境大臣「脱炭素への考えは同じ」(2020年12月18日) - YouTube
時間が無いとか聞くより読む方がいいという方は上の動画の重要なところを書き起こした記事をどうぞ。
car.watch.impress.co.jp

曖昧な試算

この会見で最も印象に残る情報を要約すると「自工会会長(トヨタの社長)が経済・環境・電力面からEV化への全面移行に懸念を示した。」になるかと思います。ただこの懸念を示す材料となる試算がどうも曖昧で、特に電力の話で納得しかねています。

原発10基って結局何kWなの?

 夏の電力、使用のピークのときに全部EV車であった場合は、電力不足。解消には発電能力を10~15%増やさないといけません。

 この10~15%というのは実際どんなレベルかというと、原発でプラス10基、火力発電であればプラス20基必要な規模ですよということをご理解いただきたいと思います。

EV全面移行すると電力不足に陥るらしいのですが、示されている条件と数値が

  • 夏のピーク
  • 解消には発電能力を10%から15%の増加が必要
  • 原発なら10基、火発なら20基必要

だけです。で、結局どれくらいの電力が必要なのか具体的な数値は明かされていません。様々な人に理解してもらうために簡単な比喩を用いることはよくあります。しかし、電力不足という観点であれば、まず示すべきは足りない電力P [kW]で、その後に比喩を持ってくる方がより理解しやすいのではないかと思います。
原発が10基必要」という表現も原発によって定格出力が異なりますから、計算に使った発電機1基当たりの出力も併せて載せてほしいものです。これは「火発が20基必要」という表現も同様です。

家一軒分の1週間分の電力量って何kWhなの?

 例えばEVをやる場合、その完成検査に充放電をしなきゃいけないので、現在だと1台のEVの蓄電量は家1軒分の1週間分の電力に相当します。これを年50万台の工場だとすると、日あたり5000件のですね、電気を充放電。

これも前述の電力不足と同様です。電気自動車の諸元を見れば電力量が載っていますから、完成検査で消費される電力量は推定はしやすいものの、試算で基準にされている家庭の電力量は生活レベルによって変わります。極端な例を示すと、オール電化を導入している一軒家の家庭とガス給湯器を使うアパートの家庭では消費する電力量が大きく異なります。家1軒分の1週間分の電力量も併せて示すべきではないかと思いました。

家1軒分の1週間分の電力?

この記事を書いている時に気が付きました。「電力」ではなく「電力量」ですね。原稿を確認する人が自工会会長の他にもいるとは思いますが誰か指摘しなかったのでしょうか。

試算には計算過程が示されていない

前述の完成検査の話では計算過程が比較的示されている方でしたが、試算にはどのようにして算出したのか分からないものがあります。特に電力不足のことについては一切計算過程が示されていません。とにかくピークの電力が足りない!とだけ言って根拠(シャレオツに言うとエビデンスでしたっけ?まあ私は言いませんけど)がまるで分からないのです。分からないことが分かったというのがここ数日の私です。
道端での会話とか一業界の発表なら計算過程を省略してもいいでしょうけれども、国策が関わるなら話は別です。

この会見で国民はエネルギー政策の判断ができるのか?

特に電力不足に関しては曖昧な情報で判断が難しいと思います。仮に「あの会見で情報は出したでしょ?判断して」なんて言われたらふざけんなって言います。
もちろん日本自動車工業会が杜撰な試算をしているとは一切思いません。後になって詳細な情報が出され、健全な議論ができることを願っています。議論は私は遠慮しますが

おまけ(という名の蛇足)

このニュースは様々なメディアで取り上げられ、Twitterでも当然話題になりましたが、恐らく最も拡散したのはこちらのツイートかと推定します。


news.yahoo.co.jp
これは毎日新聞の記事をYahooニュースに転載したものですが、記事本文が変に要約しているせいで誤認識するんじゃないかと懸念を抱いています。特にこの一文。

政府が30年代に新車のガソリン車販売をなくすことを検討していることについて「自動車業界のビジネスモデルが崩壊してしまう」と懸念を示した。

出典の節で挙げた動画と記事を見てきた方ならお分かりかと思いますが、自工会会長が懸念したのは、2050年のカーボンニュートラルについてと乗用車が全てEVに移行したとする仮定の話についてです。他のメディアもちょこちょこ覗いた程度ですが、2030年の目標について言及しているのは毎日新聞だけかと思われます。この記事だけしか見ていないならば間違いなく認識を誤ります。
そんな変な要約をしている記事ですが、なんと2020年12月24日現在で7,796件ものコメントが付いています。中には経済ジャーナリストや国立大学の教授のコメントまで載っていました。なんだかなあ。

さいごに

不毛なクリスマスプレゼントはいかがでしたでしょうか。現状は分からないことが分かっていただければ幸いです!ありがとうございました!