遮断機と遮断器、踏切で目に付くのはどっち?

踏切遮断器botを運営しているZweiglinieです。題名に書かれている問題の答えはbotのツイートを見れば一目瞭然ですが、この記事はその答えを出来る限り一般的に解説したものです。不幸にもbotのいいねからの通知でこの記事に辿り着いてしまった方はどうぞゆっくりしていってください。

遮断機と遮断器の違い

題名に対する答えです。遮断機は踏切や駐車場などで使われる交通の遮断を目的とした機械で、遮断器は電気回路で使われる電流の遮断を目的とした装置です。遮断器は分かりやすく言えばブレーカーです。

なぜ遮断機と遮断器の違いに拘るのか

電気鉄道に限った話ですが、電気鉄道ではどちらも用いられる重要な電気機器です。遮断機は前述の通りですが、遮断器は電鉄用変電所や電車(直流用高速度遮断器)、駅の電気室(変電施設)などに用いられます。踏切の話をする時に、唐突に「遮断器」と言われると私は「踏切のどの電流を切るのか…?保護回路のことか…?」と一瞬迷います。専門用語を正しく使うことは円滑な理解を促進し、勘違い・デマの発生を防止できます。

機と器の違い

そもそもで機と器の違いが理解しづらいです。例外はありますが、電動機を使って回転する物は「機」、回転せず静止している物は「器」が基本的です。

分かりやすい例外

身近な物の例外は「信号機」です。LEDがチカチカ光っている電気機器なら「器」なのでは?と個人的に思っていたのですが、信号器はスターターピストル(運動会や陸上競技で使う合図器。よーいドンのドンのこと。)の別称です。ニホンゴムズカシイネ

英語での表現

日本語では誤用しやすい遮断機と遮断器ですが、英語にしてみると別物であることが実感しやすくなります。

  • 遮断機:boom barrier
  • 遮断器:circuit breaker

circuit breakerを直訳すると「回路破壊者」という表現です。かっこいい(小並感)
boom barrierは上手いこと直訳できませんでした
なお翻訳には鉄道総合技術研究所が編纂している鉄道技術用語辞典が便利です。
鉄道技術用語辞典 第3版

蛇足「遮断器の略称」

日本においても2単語の頭文字を取ってCBというのが遮断器の略称です。遮断器にも色々と種類がありますから、例えば家庭で用いるブレーカーはMCB、ビル・マンションの電気室(変電施設)などで使われる真空遮断器はVCBといった示し方をします。

蛇足「経済用語」

株価が乱高下した際に経済の混乱を抑えるために株式取引を止めることを経済用語で「サーキットブレーカー」と言うようです。なお英訳はCircuit Breakerです。そのまんまカタカナに起こしただけです。とてもダサイ
そういや感染症対策でもこの経済用語から引用して話題になっていましたね。

ドイツ語での表現

せっかくですからドイツ語の表現も調べてみました。

  • 遮断機:Schranke
  • 遮断器:Schalter(なんか手持ちの辞書だと「開閉器」って出てきたんですけどこれで本当に合ってるんですかね…?)

オーストリアでは遮断機をSchrankenと言うそうです。

蛇足「名詞の性」

Schrankeは女性名詞、Schalterは男性名詞、Schrankenは男性名詞です。ドイツ語だけでなく、多くのインド・ヨーロッパ語族は名詞に性があり、冠詞や形容詞の活用が異なります(英語は例外的に性がありません)。ざっくり言えば、名詞の性の認識が誤っていると間違った言葉遣いをしてしまいます。特に専門用語をGoogle翻訳など機械翻訳で翻訳する時は、まず日本語の使い方が合っているところから確認する方がいいかもしれまんせんね。

その他の言語での表現

あとは知らん。勝手に調べてくれ。

踏切遮断器bot活動報告

折角なので踏切遮断器bot(@crossing_CB_bot)の活動報告もついでにやっておきます。踏切遮断器botは2020年3月15日に活動を開始し、2021年6月12日現在では1,940いいねを記録しています。活動開始から1年と3か月ほど経っていますが、一日あたりの平均件数は4.3ツイートでした。日常的に1日3ツイートくらい、踏切が話題になると10ツイート以上というのが大体の実感でしたので、平均値と実感は乖離したものではないですね。
大半は日常的な誤字ですが、たまに踏切についてのツイートが拡散したり、ニュース記事の題名に誤字が混じっているものが話題になったりすると大量に誤字ツイートが出回ります。

話題になった時の拡散

最近では3月27日に発生した筑肥線の踏切事故において、偶然にも事故の様子を捉えていたドライブレコーダーの映像がTwitter上で拡散し、多くの人が踏切を話題にしたことで、誤字ツイートが相次ぎました。数えてはないですが、恐らく今年に入ってからは一番の勢いでした。

ニュース記事による拡散

以下は題名に誤字が含まれていたために誤字ツイートが出回った発端のニュース記事の一例です。
kuruma-news.jp
https://www.nbc-nagasaki.co.jp/nbcnews/detail/3625/www.nbc-nagasaki.co.jp
web.archive.org

NHKの記事はWayback Machineです。開くのに時間がかかるのでご了承ください。
長崎放送の記事は削除されてしまったようでトップページにリダイレクトされます。Wayback Machineウェブ魚拓でも探しましたが見つかりませんでした…
新聞社や通信社では誤字を見かけたことはありませんが、テレビ会社やネットニュースでは上のようにたまに見かけます。校閲が充実しているか否かの差でしょうかね?

おわりに

無職であるにも関わらず半年以上も塩漬けにした記事をようやく完成させることができました。遮断機と遮断器の違いを通じて電気機器および鉄道電気の理解を深めていただければ幸いです。些細な活動ではありますが、今後とも踏切遮断器bot(@crossing_CB_bot)をよろしくお願いいたします。

自工会の出した情報だけじゃ国民は判断できないんじゃね?その2

明けましておめでとうございます。Zweiglinieです。今年もちょっとは役に立ちそうな記事を書けたら嬉しいなって思っています。よろしくお願いします。
さて、ホゲーッとネットサーフィンをしていた時、奇妙な記事を見つけました。
gendai.ismedia.jp
本当はもっと早い段階で書きたかったのですけど、気力が無かったのです。今からやる気出します。今回はこちらの記事の不毛なツッコミを入れていこうと思います。
(おことわり:自動車も電気も素人レベルの知識です。詳細は専門家にあたってください。ご指摘はふわふわ言葉でお願いします。ホバーランランルーと言われると私の踵がミカンの皮になります。)

おさらい

続きものの記事ですから前回書いたことのあらすじでも。ざっくりと言うと

  • 会見で最も印象に残る情報を要約すると「自工会会長(トヨタの社長)が経済・環境・電力面からEV化への全面移行に懸念を示した。」になるだろう。
  • 会見で示された全面EV化の試算は計算過程と具体的な数値が示されず曖昧で、この情報から国民が判断するのは難しいのではないか。
  • 試算について詳細な情報が出れば健全な議論ができるのではないか。
  • 報道の中には変な要約をしている記事がある。

って感じですかね。

本当にテレ東の動画見たの?

さて、今回焦点を当てる現代ビジネスの記事ですが、面白いことにあの会見の報道の中で情報量が最も多いであろうテレビ東京の動画のリンクが貼られていました。このブログ記事にも参考文献の節に載せているYouTubeの動画ですね。この動画を基にして記事を作成しただと思って読み進めていたのですが、ページを追うごとに本当に動画を見たのか疑念が湧くほどに怪しい記述が出てきました。
なお現代ビジネスの記事を検証するにあたって、テレビ東京の動画からオンライン会見の書き起こしをしました。ちなみに書き起こしにはLua\LaTeXを使いました。Lua\LaTeXいいよね。Lua\LaTeX最高!Lua\LaTeX最高!
ということで順を追って指摘していきます。

カーボンニュートラルを進める政治家に苦言?

豊田氏の発言内容を、私なりにまとめると、次の3つになる。

1)「2050年カーボンニュートラル」が日本にとって何を意味するかということを政治家はわかって言っているのか?

自工会会長が一部の政治家に対して「政治家分かってる?」と言ったのは

  • 全てEV化したらどういう社会になるのかということ
  • ガソリン車さえなくせばカーボンニュートラルへの近道になる訳でないということ

の2点についてです。カーボンニュートラルそのものについて政治家批判はしていません。というかカーボンニュートラルそのものを批判するなら「菅総理の方針に貢献するため~」なんて言わないです。

2030年の販売規制?

しかし、氏はそれにもかかわらず、2030年代にガソリン車の新車販売を無くすことが、いかに困難であるかということを、多くの数字を上げて説明する。

少なくともテレ東の動画では、2030年の規制については述べていないはずです。数字を用いて達成困難であることを述べているのは2050年のカーボンニュートラルと乗用車が全てEV化した試算についてです。動画のどの辺りに2030年の規制について述べているのか追加で説明が欲しいところです。

電動化の定義に拘っている?

中でも拘っているのが、「電動化」という言葉の定義。氏は、「電動自動車」にはEV(電気自動車)だけではなく、ハイブリッドも含まなければならないと主張する。

私は自動車業界に詳しくないのですが、ざっと調べた限り少なくとも日本ではハイブリッド車は電動車に含まれます。自工会会長がわざわざ拘らなくとも既に含まれています。
clicccar.com
こちらの記事では電気自動車とともにハイブリッド車プラグインハイブリッド車が載っています。
ところで自工会会長は電動化の定義に拘っている様子を私は見つけられなかった(電動化=EV化でないと遠回しに言っているのは分かった)のですが、動画のどの辺で電動化の定義に拘っているのでしょうか?

ピークが冬?

乗用車400万台をEVにすれば、特に冬場は電気が10〜15%も足りなくなる。

電力のピークは基本的に夏ですが。動画中で冬という単語は1回も出てきません。

蛇足「冬がピークになる例外」

電力需要のピークは基本的に8月の昼間です。これは猛暑による冷房の需要によるものです。
しかし、北海道電力ネットワーク管内は例外で冬の夕方がピークです。これは家庭の暖房やロードヒーティングなどの融雪の需要によるものです。もしやこの現代ビジネスの記事の著者は北海道電力ネットワーク管内にお住まいなのでしょうか…?
https://thesis.ceri.go.jp/db/files/GR0002900555.pdf
https://wwwc.hepco.co.jp/hepcowwwsite/info/2017/__icsFiles/afieldfile/2017/10/12/171012b.pdf

消費電気?

EVの完成時に行われる充放電の検査では、一台につき平均家庭の1週間分の消費電気がただ無駄になるそうだ。

消費電気って何でしょうね。電力P [kW]でしょうか?電力量E [kWh]でしょうか?「電力量」と言えば伝わるはずです。また「平均家庭の」ではなく「家1軒分の」です。この文では家の何軒分の電力量なのかが分かりません(そもそも家1軒分の1週間分の電力量が分からないのですがそれは置いておいて)。変な要約がされているせいで余計な混乱を招きます。

正しい報道とは何なのか

オンライン会見では報道の在り方についても言及していて、現代ビジネスの記事もそれに便乗したかのような書きっぷりです。しかし、この記事では大手のメディアならまず間違えないであろう2030年の規制との取り違えや誤字、変な要約などがあります(毎〇新聞の話はひとまず置いておきましょう)。他の報道機関を批判できるようなものではないのではないかと個人的に思います。

おまけ

最近のLNG不足で電力がヤバくて電力融通しまくっている、というので思ったのですが、オンライン会見で言っていた日本のピークの電力が足りないと一言に言っても、どの送配電会社に何kW足りないんだろうなあと思いました。前述のように北海道電力ネットワーク管内では電力のピークが冬のために夏は比較的余裕が生まれます。それとも北海道電力ネットワーク管内でも夏は足りないのですかね?送配電会社によって電力事情は異なっていますから、それを加味した試算の内容の公表を待ち望んています。

おわりに

いかがでしたでしょうか?オンライン会見からもうすぐ1か月が経ちますが、分からないことが分かった状態から特に発展していません。それどころかこのようなよく分からない記事が出てきたので、このブログ記事を書いた次第です。
健全な議論・世論の形成は大切ですが、Twitterでざっくり見た限りはこの現代ビジネスの記事を鵜呑みにしている人がいる辺り、健全な世論からはほど遠いように思います。また、昨今の電力危機に託けて電動化を批判するツイートも見かけてなんだかなあと微妙な顔をしています。電動化=EV化ではない、というのは当の自工会会長が言っているのにも関わらず…
それはともかく、これから健全な議論ができることを願っています。あ、議論については私はお断りしますよ?

自工会の出した情報だけじゃ国民は判断できないんじゃね?

いえーいメリークリスマスち○こー!Zweiglinieです。
今回は日本自動車工業会のオンライン会見で出た試算に素人がツッコミを入れるという不毛な記事を書いていきます。結論は題名に書いてありますので、その前提で読み進めてもらえるとありがたいです。
(おことわり:自動車も電気も素人レベルの知識です。詳細は専門家にあたってください。ご指摘はふわふわ言葉でお願いします。ホバーランランルーと言われると私の胃腸が下痢を起こします。)

出典

この動画を見てもらうと話が早いです。
自工会 豊田会長が全面EV移行に懸念 小泉環境大臣「脱炭素への考えは同じ」(2020年12月18日) - YouTube
時間が無いとか聞くより読む方がいいという方は上の動画の重要なところを書き起こした記事をどうぞ。
car.watch.impress.co.jp

曖昧な試算

この会見で最も印象に残る情報を要約すると「自工会会長(トヨタの社長)が経済・環境・電力面からEV化への全面移行に懸念を示した。」になるかと思います。ただこの懸念を示す材料となる試算がどうも曖昧で、特に電力の話で納得しかねています。

原発10基って結局何kWなの?

 夏の電力、使用のピークのときに全部EV車であった場合は、電力不足。解消には発電能力を10~15%増やさないといけません。

 この10~15%というのは実際どんなレベルかというと、原発でプラス10基、火力発電であればプラス20基必要な規模ですよということをご理解いただきたいと思います。

EV全面移行すると電力不足に陥るらしいのですが、示されている条件と数値が

  • 夏のピーク
  • 解消には発電能力を10%から15%の増加が必要
  • 原発なら10基、火発なら20基必要

だけです。で、結局どれくらいの電力が必要なのか具体的な数値は明かされていません。様々な人に理解してもらうために簡単な比喩を用いることはよくあります。しかし、電力不足という観点であれば、まず示すべきは足りない電力P [kW]で、その後に比喩を持ってくる方がより理解しやすいのではないかと思います。
原発が10基必要」という表現も原発によって定格出力が異なりますから、計算に使った発電機1基当たりの出力も併せて載せてほしいものです。これは「火発が20基必要」という表現も同様です。

家一軒分の1週間分の電力量って何kWhなの?

 例えばEVをやる場合、その完成検査に充放電をしなきゃいけないので、現在だと1台のEVの蓄電量は家1軒分の1週間分の電力に相当します。これを年50万台の工場だとすると、日あたり5000件のですね、電気を充放電。

これも前述の電力不足と同様です。電気自動車の諸元を見れば電力量が載っていますから、完成検査で消費される電力量は推定はしやすいものの、試算で基準にされている家庭の電力量は生活レベルによって変わります。極端な例を示すと、オール電化を導入している一軒家の家庭とガス給湯器を使うアパートの家庭では消費する電力量が大きく異なります。家1軒分の1週間分の電力量も併せて示すべきではないかと思いました。

家1軒分の1週間分の電力?

この記事を書いている時に気が付きました。「電力」ではなく「電力量」ですね。原稿を確認する人が自工会会長の他にもいるとは思いますが誰か指摘しなかったのでしょうか。

試算には計算過程が示されていない

前述の完成検査の話では計算過程が比較的示されている方でしたが、試算にはどのようにして算出したのか分からないものがあります。特に電力不足のことについては一切計算過程が示されていません。とにかくピークの電力が足りない!とだけ言って根拠(シャレオツに言うとエビデンスでしたっけ?まあ私は言いませんけど)がまるで分からないのです。分からないことが分かったというのがここ数日の私です。
道端での会話とか一業界の発表なら計算過程を省略してもいいでしょうけれども、国策が関わるなら話は別です。

この会見で国民はエネルギー政策の判断ができるのか?

特に電力不足に関しては曖昧な情報で判断が難しいと思います。仮に「あの会見で情報は出したでしょ?判断して」なんて言われたらふざけんなって言います。
もちろん日本自動車工業会が杜撰な試算をしているとは一切思いません。後になって詳細な情報が出され、健全な議論ができることを願っています。議論は私は遠慮しますが

おまけ(という名の蛇足)

このニュースは様々なメディアで取り上げられ、Twitterでも当然話題になりましたが、恐らく最も拡散したのはこちらのツイートかと推定します。


news.yahoo.co.jp
これは毎日新聞の記事をYahooニュースに転載したものですが、記事本文が変に要約しているせいで誤認識するんじゃないかと懸念を抱いています。特にこの一文。

政府が30年代に新車のガソリン車販売をなくすことを検討していることについて「自動車業界のビジネスモデルが崩壊してしまう」と懸念を示した。

出典の節で挙げた動画と記事を見てきた方ならお分かりかと思いますが、自工会会長が懸念したのは、2050年のカーボンニュートラルについてと乗用車が全てEVに移行したとする仮定の話についてです。他のメディアもちょこちょこ覗いた程度ですが、2030年の目標について言及しているのは毎日新聞だけかと思われます。この記事だけしか見ていないならば間違いなく認識を誤ります。
そんな変な要約をしている記事ですが、なんと2020年12月24日現在で7,796件ものコメントが付いています。中には経済ジャーナリストや国立大学の教授のコメントまで載っていました。なんだかなあ。

さいごに

不毛なクリスマスプレゼントはいかがでしたでしょうか。現状は分からないことが分かっていただければ幸いです!ありがとうございました!

GIGAZINEの記事について思うこと

最近寒いですね。
いつものようにボケーッっとTwitterを見ていたところ、以下のGIGAZINEの記事を見つけました。
gigazine.net
(おことわり:私は電気どころか英語も不得意なので正確性に欠けるかもしれません。詳細は専門家にあたってください。ご指摘はふわふわ言葉でお願いします。ホバーランランルーと言われると私の足の小指がタンスの角にぶつかります。)

電力と電力量間違えている

先日NHKの記事について批評(になってるのかな?)を投稿しましたが、その記事で指摘したことと同じ表記を見つけてしましました。
あ、先日書いた記事というのはこちらです。
zweiglinie.hatenablog.com
拙作ですがよければどうぞ。
さて、問題の一文を引用します。

さらに、ティハド氏らが設計した回路では、ダイオードで電流の方向を切り替えることで、供給される電力量が減少するのではなく増加するように設計されています。

ええ、当然ながら「電力」の誤字です。弱電で電力量の増加が画期的!って言うのは蓄電池でもなければ基本おかしいです。コンデンサだったら静電容量と言いますからね。
電力と電力量の違いについては詳細は以下のサイトを参考にしてください。
kWとkWhは何が違うんでしょうか? - よくある質問 | 太陽生活ドットコム

引用元を確認してみよう

アメリカの大学が間違えるとは思いませんが、もしかしたら引用元が「電力量」と記載していて直訳してしまったのかも?と思い、GIGAZINEが載せている出典元を確認してみました。
https://journals.aps.org/pre/abstract/10.1103/PhysRevE.102.042101journals.aps.org
news.uark.edu
前者の出典は論文がダウンロードできるサイト(日本でいうところのJ-STAGEのようなサイトですかね?)に載っている概要(abstract)で、後者は論文を発表した大学であるアーカンソー大学のサイトです。本来なら英文を全て意味の通る日本語に訳するべきではあるのですが、私の拙い英語力では精度も低い上に時間がかかってしょうがないです。ニートでも時間は有限ですからね。
ということで電力量の英訳である「electrical energy」と単にエネルギーの英訳である「energy」をctrl+Fで検索してみました。

結果
  • 前者の出典:どちらも0件
  • 後者の出典:energyのみ7件ヒット

後者の出典でヒットしたenergyは「energy-harvesting」または「harvesting energy」という英単語・節での記述であるため、エネルギーハーベスティングのことであり、電力量とは直接的な関係はないです。つまりは「電力量」を直訳した文は存在しませんでした。
ということでGIGAZINEの記事中にある「電力量」は「電力」の誤字であることが分かります。

電力の大きさのことを電力量と言ってないか?

先日のNHKの記事もそうですが、電力の大きさのことを電力量と言っているのではないか?という仮説を立てました。今のところ立証する気はありませんし、立証したところでこのブログのネタにしかならないですが、いずれにせよ電力量の誤用がこれから出ないことを祈るばかりです。

「誘発」は適訳なのか

次の問題の一文です。

室温でグラフェンの熱運動が回路に交流電流(AC)を誘発することを発見。

電流を誘発ってなんじゃらほいという話です。恐らくはinduceを一般的な意味で訳したのでしょう。しかし、電気(物理)の専門用語としては「~を誘導する」という意味で訳されます。発電の原理で用いられるファラデーの電磁誘導はFaraday's law of induction(inductionはinduceを名詞化した単語)と言いますし、電車で使われる誘導電動機はinduction motor(略してIM)と言います。
さて、「交流電流を誘導する」という言い回しでは、専門的には意味の通る文になりましたが、一般的には分かりづらいままです。私の少ない脳みそを捻ってみたところ、「発電する」と言い換える方が理解しやすいのではないかと思いました。

「無限に電力を生成できる」は正しい意味なのか?

題名に関する野暮ったいいちゃもんです。
無限に電力を生成できる可能性がある回路はエネルギーハーベスティングのことを指しています。エネルギーハーべスティング(energy harvesting)は環境発電とも訳され、身の回りにある振動や騒音を収穫(harvest)し、エネルギー源として発電することを意味します。分かりやすいもので例えると、太陽光発電はエネルギーハーベスティングの一種です。ただし、再生可能エネルギーのような電力系統に接続するものではなく、電源プラグや充電池を付けることが困難なセンサなど、微小な出力での利用が念頭に置かれています。
さて、題名の表現は、無限の定義によっては正しいですが、題名のみではエネルギーハーべスティングのことは読み取れず、大袈裟なものに思えます。もちろん、記事で紹介されている技術は研究途上のものですから、「可能性」であることは間違いないのですが…

英語版ではどんな記述をしているか

このGIGAZINEの記事には英語版があります。
gigazine.net
不正確な日本語なのに機械翻訳にかけるって何を考えているのやら、というツッコミはさておいて、「電力量」と「~を誘発する」の英訳はどうなっているか確認してみます。

電力量

the amount of power

電力の量…かなり悩んだため合っているかどうかは保留にしました。前述のような「電力の大きさ」なら合っているのですが、「the amount of ~」に「~の大きさ」という意味が含まれているのかが分からないのです。

~を誘発する

Discovered that the thermal motion of graphene induces alternating current (AC) in the circuit at room temperature.

機械翻訳ですから「~を誘発する」をそのまま「induces」と訳しています。面白いことに英語版の方が正確な文になっています。やっぱり母国語が英語の方が得なのかな?

さいごに

このブログを書いている時に、英語もできる友達が「電源って意味なのに日本語の記事が意味不明な翻訳をしている」と愚痴を言っていたことを思い出しました。英語で発信された記事をそのまんま翻訳したような記事の翻訳は割と適当なことが多いです。このブログだってかなり適当ですけれども。技術系であれば尚更です。
極端なことを言えば、記事を読む人が出典元だけを読めば、こんな初歩的な誤字誤訳は起こらないのですが、私みたいな英語弱者や理科が苦手な工学弱者に情報格差をもたらしてしまいます。技術的な分野では、門外漢でも分かりやすく、かつ正確に報道することがマスコミの役割だと思っています。しかし、その役割を果たしているか疑問に思うメディアは少なくないです(超高温電流とかね)
GIGAZINEは誤訳や大袈裟な表現がどうやら多いようなので、今後とも注意したいところです。

蛇足

このブログをチンタラ書いていたらリニアに関する酷い記事が出てきました。鉄道電気技術に関するものなのでブログの格好のネタですが、Twitterやヤフコメで既に指摘されまくっているため、私の出る幕ではないかと思いました。単にやる気がないこともありますが、リニアのアレについては書きません。それにしても「超高温電流」って面白いことを言いますよね。

無線送電(?)のNHKの報道に思うこと

お久しブリーフです。第三種電気主任技術者は不合格だったZweiglinieです。ボケーッっとTwitterを眺めていた時に興味深いニュースが流れてきました。
pc.watch.impress.co.jp
初めてみた報道は確か通信社のものだったかと思うのですが、見つからなかったのでPC watchのリンクを貼りました。ほえーすげーとボケーッっと眺めていたのですが、NHKの報道を見て困惑が頭いっぱいに広がりました。
www3.nhk.or.jp
(おことわり:強電も弱電も素人同然なので詳細は専門家の意見を参照してください。ご指摘はふわふわ言葉でお願いします。ホバーランランルーと言われると私の肩が脱臼します。)

まず初めに

金沢工業大学のプレスを読んでおく方が誤解なく理解できるかと思います。私が間違えて記事を書いている可能性もありますので、まずは一次資料をあたってください。
www.kanazawa-it.ac.jp
結構長く専門用語が羅列してあるので、端的に理解したい方は上のPC watchの記事を参照してください。よくまとまっていますよ。

送電とは何か

送電の定義

一般的に送電とは電気を送ること全般を指してしまいますが、電気の世界、とりわけ電力業界で送電とは変電所から変電所まで、または発電所から変電所までの22 kV以上の電圧で電力を送ることを指します。ちなみに需要家(電力を消費する所のこと)に電力を配ることは配電と言って送電とは別の分野です。住宅街に林立している電柱と山地に建っている鉄塔では電気的にも使っている技術が異なります。そのため電力会社でも部署が異なります。電力自由化で発電会社と送配電会社が分離しましたが、「送配電」なんて妙な名前を使っているのは送電と変電が別物だからということもあります。加えて電源開発の分社化後は「電源開発送変電ネットワーク株式会社」というこれまた妙な会社名になっています。

「無線送電」は正しい記述なのか

さて、蛇足も交えて送電の定義を書きましたが、NHKが書いた「無線送電」は送電なのでしょうか?当然ながら狭義の送電ではありません。金沢工業大学のプレスには「送電」の記述が見られるものの、「無線送電」の記述は無く、「無線電力伝送」と書かれています。本来なら「無線送電」は「無線電力伝送」と書くべきです。しかし、NHKは報道機関です。より多くの人に分かりやすく伝えるために一般的な定義で言葉を選びます(謎の半導体企業の話でもありましたね)。正確な定義の専門用語で記述しても、分かりにくい記事なら報道機関の独りよがりでしかありません。これで私が題名に(?)を付けた理由が分かるかと思います。狭義で不正確ではありますが、正確な表現では却って理解しづらくなることは往々にあります。

「世界でもトップクラスの高さ」とはどの程度のことなのか?

具体的な効率はいくつなのか

科学では比較は重要な要素の一つです。データを定量的または定性的比較を行うことで具体的な検討ができるようになります。この比較には表かグラフが必要ですが、表・グラフの作成には信頼性が高く具体的な数値が不可欠です(数値もないのにグラフ描いたらインチキだからまあ当たり前だよね)。
さて、NHKの記事では「世界でもトップクラスの高さ」との記述がありますが、分かり切っている話でもなく具体的な数値も挙げずにこんなことをレポートで書いたら間違いなく採点者のチェックが入ります。「世界でもトップクラスの高さ」とは効率の話ですが、例えば他の研究の効率が30%から70%で留まっている中で90%を叩きだしたら偉業ですし、他の研究の効率が80%から90%と出ている中で89%を記録したら何がすごいの?という反応に誰でもなると思います。問題は両者とも「世界でもトップクラスの高さ」と書けてしまうところで、実に曖昧な表現です。
なお、金沢工業大学のプレスによると、今回の成果では効率92.8 %を達成し、5.8GHz帯整流回路では世界最高であるとのこと。他の研究との効率の比較ではグラフが用いられていて、40%から約80%に留まっている中で、92.8 %と抜きんでていることが分かります(金沢工業大学のプレスの図5です)。「92.8 %」と書くだけでも十分なのに曖昧な表現で濁しているのはどうも理解できません。「世界でもトップクラスの高さ」なのは間違いないのですが。

数値の記載があまりにも少ない

NHKの記事で用いられている数値を挙げてみます。

  • 3倍
  • 10ワットクラス

「3倍」は従来と比較して送れるようになった電力のこと。新開発の部品を指していますが、これについてはアレな記述なので詳しく後述します。「10ワットクラス」はこれから研究する電力のこと。こちらもちょっとだけ後述します。ちなみに「10ワットクラス」という単語は金沢工業大学のプレスには書かれていません。「10W」と書かれています。
なんとたったこれだけ。いやいや、これだけで一体何が分かるんだよ。

この研究の成果は窒化ガリウムの功績が大きいのか?

この見出しを見たときに「は?(困惑)」と思わず声を上げた人も多いのではないでしょうか。NHKの記事では挙がっている材料名は「窒化ガリウム(以下GaN)」のみ。これを使って研究して成果を挙げたと誤解している人もTwitterを見る限りは多そうです。世界最高の効率を叩き出した研究で使用した材料はガリウムヒ素(以下GaAs)です。GaNではありません。世界最高効率はGaNの功績ではないのです。
GaNは先述の「従来の3倍の電力を送れるようになった部品」に使われる材料のことです。この部品を使って次の段階である10Wの無線電力伝送の研究を行います。NHKの記事だけではここまで読み取れません。読み取れたらエスパーです。
この誤解しやすい書き方ですが、困ったことに間違ったことは言ってないのです。該当の段落では研究グループが、

  • 世界最高効率で無線電力伝送を成功したこと
  • GaNを用いた部品の開発をしたこと

が記述されています。どこにも「GaNを用いて無線送電をした」とは書いていません。だんだん腹が立ってきました。

電力と電力量の違い

電力とは1秒当たりにする仕事(エネルギー)、というと分かりにくいですが、出力もしくは能力と言えば分かりやすいでしょうか。例えば照明器具なら電力が高ければ高いほど明るくなります。単位はW(ワット)です。
電力量とは文字通り電力の量を示します。単位はWh(ワットアワー)です。例えば54Wの照明器具を30分使い続けると27Wh、1時間使い続けると54Whです。電気代の算出・請求に使われる単位ですから馴染みのある単位かと思います。
kWとkWhは何が違うんでしょうか? - よくある質問 | 太陽生活ドットコム
こちらのサイトに分かりやすく解説しています。よければ参考にしてください。
両者とも中学校の理科で習う義務教育の範囲の知識です。私は「義務教育の範囲だから知ってて当たり前の一般常識である」とは言いません(英単語とか丸っきり分からないしね)。しかし、報道機関の出した記事ともなれば話は変わってきます。

送ることができる電力量が少ない…?

NHKの記事では従来の無線電力伝送の課題点の一つに「送ることができる電力量が少ないこと」を挙げています。しかし、この文はおかしいことに気付きます。電力量は電力の累計の量ですから、電力量が少ないなら、時間をかければ電力量はいくらでも増やせます。時間が課題なら素直にそう書けばいいですから、文が変なことが分かります。個人的な推測に過ぎませんが、「送ることができる電力が少ないこと」とすると意味の通る文になりますから、この記事を書いた著者が電力と電力量の違いを理解してないと推測します。もちろん予測変換による誤字も疑いましたが、記事に添付されている動画(9月24日16時現在でなぜか見られなくなっていますので動画のスクリーンショットが貼ってあるツイートを貼っておきます)を見てもテロップに「電力量:小」と書いてあるところを見るに理解してないのだと思います。
専門家でないと分からない専門用語ならともかく、義務教育の範囲の電気の専門用語の意味を取り違えて電気関連の報道をするというのは私には理解しがたいことです。

再生可能エネルギーとの関連性

今のところ直接的な関連はありません。回れ右して帰りましょう。

記事の表現

私がこの記事で、ここまで「金沢工業大学」と何回使ったでしょうか?直近含めて6回です。対してNHKの記事では「金沢工業大学」と何回使ったでしょうか?NHKは0回です。添付の動画では使っているようですが、見られないため書いてないも同然です。対して記載する必要性の薄い「ノーベル物理学賞」は見出し含めて3回使っています。実に大言壮語な記事だと個人的に思います。
動画と合わせて読むように記事を書いているなら、動画が見られなくなった時に記事を書き直してほしいものです。このまま放置なら誤解が生じてしまいます。
(2020年10月9日訂正:誤字を修正しました)

さいごに

このNHKの記事は研究だけでなく科学知識を誤って認識してしまう可能性が高く、できることなら訂正してほしいです。私のこの駄文をウッカリ読んでしまった皆様も報道の正確さには日頃から十分注意するよう自戒を込めてお願いします。
また、この研究自体は素晴らしいもので、未来の生活を支える技術となり得る可能性が十分にあります。これからも注目し続けてほしいと思います。
(2020年10月9日訂正:ひらがなを漢字に変換しました)

おまけ

この記事を作っている時に他の報道機関の報道を探したところ、朝日新聞の記事が見つかりました。
www.asahi.com
私がこの記事で指摘したところに限っては正しく記述されています。ぜひとも参考にしてください。

NTTの電力業界参入報道とその反応に対して思うこと

29日の夕方に日経新聞が報道し、30日の朝刊では1面を飾ったNTTの電力業界参入。

Twitterでの反応や検索して見つけた記事を見て思うことをつらつら書いていきます。

(おことわり:私は電気電子工学科を卒業しておきながら第三種電気主任技術者すらも取れないクソザコです。電気屋を自称しておきながら実は電気はあまり詳しくないのかもしれないです。)

そもそも報道とは

これとか

www.nikkei.com

これのこと

 W(ワット)を小文字で書くなとか万kWのような頭悪い単位なんか使うな、なんて細かいツッコミはまた別の機会にします。

あたかも初報のような反応をしている人がちらほらいましたが、去年の11月には既に同じような報道が出ています。

NTTが独自電力網 全国拠点に蓄電池、災害時に供給も :日本経済新聞

NTTが発電・送電網整備に6千億円 蓄電池活用し電力最適制御 災害時にも - 産経ニュース

電力業界に風穴を NTTが独自送電網を整備へ - 毎日新聞

新聞社を3社ほど用意してみました。好きなのを選んでね!私は3社とも好きじゃないんだけどね

11月の報道と比較すると累計投資額が4000億円増えている点が目立つところでしょうか。まあ日経は全文見られないんであまり突っ込んで言えないのですが。

一般家庭には影響はあるのか

電話線を使う?

現時点では全くと言っていいほど影響はありません。NTTは自社以外に配電する需要家は電話局付近の工場や病院などの法人向けに限る方針です。電話線で配電すると思い込んでいる方が見られますが(冗談で言っている人もいましたが)、電話線の電圧は48Vで低圧配電線の100Vの約1/2の大きさ、つまり電線での損失が約4倍になります。というか直流48Vを家庭に引き込んだところで何に使うんですかね…?

電信柱?

NTTが所有している電信柱も特に関係ないと思われます。電信柱は電話線と低圧配電線しか架けられません。低圧のみの配電で電力会社よりも効率が良くなることはまずないでしょう。

もしかしたらの話

もしかしたらの話ですが、一般家庭に影響があるとすればマンションや大きいアパートなど、特別高圧もしくは高圧で受電している施設に入居している世帯でしょう。報道ではマンションには配電しなさそうですが、低圧で受電している一軒家に比べればハードルは低いかなと思っています(低圧受電では直流用の変圧機器が必要になりますから、とんでもない額の投資が必要になります)。あくまで将来的な話ですね。

ともあれ、ほとんどの一般家庭では影響はありません。電気代が安くなる?何を言っているのやら。

電力会社に影響はあるのか

特別高圧もしくは高圧で受電している法人向けであれば競合相手になり得るでしょう。また、発電事業者が取引先をNTTに切り替えて電力会社の再エネの割合が落ちる可能性もあります。NTTは大規模な蓄電池を配備することから出力抑制をかける回数を減らせる可能性がありますし、そこをアピールポイントにすることも出来るでしょう。

ただ自社のための配電線を引くとはいえ、既設の電力会社の高圧配電線を切る(いわゆるオフグリッド)までやるかと言われるとそこまでしないかと予想します。非常時や再エネからの電力が不足する場合などに引き続き電力会社から高圧で受電するかと思います(というか足りない時は電力会社から持ってくるイメージ図があった気がするのですが見つかりません…見つけたらリンク貼っておきます)。古くから広大な送電網を構築しているJR東日本も足りない時は東京電力から調達し、東日本大震災の電力危機では東京電力に電力を融通しています。

https://www.jreast.co.jp/press/2010/20110312.pdf

電力会社への利点があるとすれば、大規模な蓄電池を活用してピークシフトが可能なところでしょうか。特にこれからの季節は日中の最大電力をいかに減少させ、他の時間帯の需要を上げるかが課題です。ピークが緩和されれば発電の負担が軽減され、設備に余裕が生まれます。

前述の通り、現時点では一般家庭への影響は皆無ですので、高圧受電の法人では競合するものの、ある程度は共存するのではないかと予想しています。

電力会社より損失が少ない配電網とは一体何者なのか

個人的に興味を惹く部分はここでしょうか。今回の報道で記述があったかは分かりませんが、去年11月の報道では電力会社よりも損失の少ない直流で配電するとの記述があります。

さて、送配電損失は一般的に5%です。効率に換算すれば95%ですね。現時点の電力会社でも結構優秀です。ちなみに当然ながら電力会社によって損失(効率)は異なります。下のPDFの9ページに電力会社ごとの電圧別送配電ロス率の実績が記載されています。

https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_electricity/pdf/036_05_00.pdf

当初は22kV級に匹敵する特別高圧で配電網を構築するのかと思っていました。しかし、送配電効率は元から高効率ですから、無効電力が存在しない分だけ電力会社よりも効率が良くなると言いたいのではないか、つまりは公称電圧はさほど高いものではないのではないかと最近は予想しています。

現時点では

  • 直流を用いる
  • 電力会社よりも効率が良い

の2点しか公表されず、どのような仕様になるのか楽しみでもある反面、本当に効率的な配電網になるのか不安でもあります。

まあ続報を待ちますかね。

注意すべき点

これはこの報道に限らず再生エネルギー関連の広報・報道に言えることなのですが、発電容量と発電出力は同じではありません。太陽光発電風力発電の出力は常に変動するもので、発電容量の電力が常に発電できるわけではありません。既に建設しているものであれば実績の値(最大出力や年間発電量など)を見る方が現実的です。

ただしNTTは既設の発電所から調達するにしても実績がありません。これから作るものです。そのため、一定の目安・目標として見るべきものかと思います。

心配な点

気がかりなのは蓄電池の寿命と扱いです。交流配電の要である変圧器の一般的な寿命は25年から30年ほどです。

faq.hitachi-ies.co.jp

対してNTTの配電網の要である蓄電池の寿命はリチウムイオン電池なら10年、NAS電池なら15年ほどです。

www.eco-hatsu.com

環境によっては劣化が早まるために予想以上に経費がかからないか心配になります。

また、NAS電池は材料にナトリウムを使用しているため、火災が発生すると消化に手間取ります。

http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/paper/r_11/11tyoukan2.pdf

電話局の有効活用ということは蓄電池が置けるように改築するでしょうから、無理な設計にならないか心配です。まあそんなヘマはしないでしょうけれども。

最後に

個人的に面白いプロジェクトだとは思います。ただ何度も言うように一般家庭への影響は現時点で皆無ですので、普段の生活が劇的に変わるものではないことは留意しておくべきことでしょう。仕様が固まり、工事が始まるまで時間がありますから続報を気長に待ちますかね。技術的にどんな物に仕上がるのか楽しみです。

ゲーミング化した神奈川県章をPDFに貼り付けようとした #TeXで遊ぼう

新しい生活様式ではいかがお過ごしでしょうか。私は新しきものを拒絶し時代の狭間に取り残されそうになりながら精神的に自滅しそうな毎日を無益に過ごしています。

そんな老害ムーブをかましている時、ふと題名の通りのことを思い付きました。例によって\LaTeXです。今回は\LaTeXでPDFにsvgを貼り付ける方法を述べていきます。と、思っていたのですが出来ませんでした。

(おことわり:情報工学は専門分野ではないので、所々間違っている可能性があります。ご指摘の際はふわふわ言葉でお願いします。ホバーランランルーと言われると私の身体が爆散します。)

なぜこのようなことを?

神奈川県内のすべての海水浴場が閉鎖され、花びらの欠けた夏がやって来ようとしています。そんな中、少しでも家で神奈川県を楽しんでParty Peopleの気分になっていただけたら嬉しいなあと思いました。嘘です。後付けです。Peopleの綴りが思い出せなかったのは公然の秘密です

あ、PartyといえばParty Parrotのsvg版もあるのでリンク貼っておきますね。

https://codepen.io/nathangath/pen/RgvzVY/

SVGとは何か?

ベクタ形式の画像ファイルです。説明が面倒なのでWikipediaのリンクを貼っておきます。

Scalable Vector Graphics - Wikipedia

簡単に利点を挙げると、

の3点でしょうか。プログラミング感覚で画像が作れます。

企業や組織のロゴやアイコン、シンボルによく使用されます。写真のjpgやイラストのpng、アニメーションのgifなどと比べて直接貼り付けられるサイトが少ないためか知名度は低いかもしれません。ちなみにTwitterニコニコ静画でもサポートされていません。Hatenaでも未対応と言われました。狂いそう・・・!(静かなる怒り)

XMLベースでコードが記述されることもあって様々な機能を備えています。その一つがアニメーション(動画)機能です。

defghi1977.html.xdomain.jp

SVGの動画化には様々な方法が存在しますが、今回はanimate要素を使います。描画されている要素にanimate要素を挿入し、あれやこれや属性を加えることで簡単にゲーミング化できます。

神奈川県章をゲーミング化する

ウィキメディア・コモンズを使う

テキストエディタがあればSVGを作れるとはいえ、CUIで神奈川県章を記述できるほどの数学的センスは持ち合わせていません。Wikipediaの姉妹プロジェクトであるウィキメディア・コモンズにある神奈川県章を二次創作することにしました。

commons.wikimedia.org

creativecommons.org

権利的にはCC BY-SA 3.0だから大丈夫…だよね?(怪レい)

一応CC BY-SA 3.0のライセンス全文と非公式日本語訳を貼っておきます。

Wikipedia:Text of Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 Unported License - Wikipedia

Wikipedia:クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植 - Wikipedia

ゲーミング化の定義

重要なことを忘れていました。スラングとしての「ゲーミング○○」とは一体何なのか?定義する必要があります。一応調べてみたのですが、製品によって発光する色がまちまちでよく分かりませんでした!いかがでしたでしょうか?

weathernews.jpゲーミングと名の付く製品は一般的に虹色に光ります。虹色とは上で示した記事の通り、日本では赤、橙、黄、緑、水色、青、紫の七色で構成されます。今回はこの「七色を階調的に表現したもの」をゲーミングとします。

SVGファイルのコードを改変する

ようやく本題です。本題その1です。

グループ化する

animate要素を適用させるには、一般的に

<path (中略)/>

と書かれているところを

<path (中略)><animete (中略)/></path>

と改変します。今回は描画されている図形を全てゲーミングで塗り潰すので、g要素でグループ化して、グループの中にanimate要素を付加します。

<path (中略)/>
(中略)
<path (中略)/>

これが

<g>
<path (中略)/>
(中略)
<path (中略)/>
<animete (中略)/>
</g>

こんな感じに。

こうしてコードの改変を控えめにすることでストレスの減少やタイプミスによるエラーを減らしています。対象画像は都合にいいことに、既に全体的にグループ化されていたので、animate要素を付加するだけで簡単に改変できました。

animate要素の中身

animate要素は以下の構成で記述しました。

<animate attributeName="fill" dur="3" values="red;orange;yellow;green;skyblue;blue;purple;red" repeatCount="indefinite"/>
属性名 説明
attributeName 動かしたい属性を記述
dur 動作時間、単位はs(秒)
values 値、ここでは色を記述、セミコロンで区切れる
repeatCount 反復回数、indefiniteは不定

属性の説明はざっくり上の表の通りです。attributeNameとvaluesはいじくれば色々とできますが、応用例はぐぐれば出てきます。私は疲れました。

ゲーミング化する要素のfill属性を消す

attributeName属性でfill属性を指定しても、対象要素のfill属性が優先されるようで、動画化しませんでした。fill属性を消さないとゲーミング化しませんので、忘れずに消しておきましょう。

完成したゲーミング神奈川県章

割とチカチカするので凝視すると気分が悪くなるかもしれません。悪しからず。テ、テ、テレビを見る時は~

図1 ゲーミング化した神奈川県章

 

未対応でもSVGを貼れる方法があるようで、下のサイトの手法で貼り付けてみました。

dhrname.hatenablog.com

アニメーションも動いていてほっとしています。余計な枠が見えていますが、<code></code>で囲んでいるせいでしょう。しかし、これがないとSVGの貼り付けができないのです。余計な枠は見なかったことにしてください。人間の視覚の補完機能は優秀です。人間の可能性を信じてください。

TeXに貼り付ける

一応本題その2ですが、アニメーションの貼り付けできなかったので参考程度に留めてください。

Inkscapeをインストールする

以下で使用するパッケージでは内部でInkscapeを使用するため、Inkscapeをインストールする必要があります。

Inkscape 1.0をダウンロード | Inkscape

またインストール後にパスを通します。\TeXの一部のインストールソフトでは自動でやってくれますが、Inkscapeは手動で設定する必要があります。

svg.styを使う

この節のパクリ参考元はこちらです。

konoyonohana.blog.fc2.com

>クラスファイルは欧文クラスを利用します.日本語には対応していません.

Oops!なんと和文クラスファイルに対応してないとのこと。ただバグなのかは分かりませんが、和文クラスファイルでもタイプセットできたので、以下に手法を示します。(なお前述の通りアニメーションは動作しませんが)

まずはhoge.texファイルを以下のように記述します。

\documentclass{article}
\usepackage[varg,cmintegrals,cmbraces]{newtxmath} %数式の書体
\usepackage{newtxtext}
\usepackage{svg} %SVGを取り込む

\title{Gaming Kanagawa Prefecture}
\author{Zweiglinie}

\begin{document}

\maketitle

\begin{abstract}
PARTY OR DIE
\end{abstract}

\section{Kanagawa Prefecture}

\includesvg{Emblem_of_Kanagawa_Prefecture_gaming.svg}

\end{document}

\mathrm{pdf}\LaTeXでタイプセットします。

pdflatex --shell-escape hoge

タイプセットが成功すると作成したhoge.texと同じフォルダにsvg-inkscapeというフォルダが勝手に作成されます。svg-inkscapeファルダの(タイプセットに使ったSVGファイルの名前)_svg-tex.pdf_texという謎拡張子ファイルを、作成したtexファイルのあるフォルダにコピーします。

次にクラスファイルをltjsarticleに変えて

\documentclass{ltjsarticle}

\mathrm{Lua}\LaTeXでタイプセットします。

lualatex hoge

こうするとSVGを貼り付けられます。

f:id:Zweiglinie:20200627005739p:plain

図2 一般的な神奈川県章のSVGをPDFに埋め込んだ様子

animate要素を記述しても図2のように無視されます。アニメーションを入れなければ十分に利用価値はあると思います。

InkscapeでPDFに変換する

Inkscapeは一般的にマウス等を使ってロゴを作ったりロゴを作ったりロゴを作ったりするGUIのソフトで知られていますが、パスを通すとCUIのソフトとしても利用できます。

コマンドプロンプトであれやこれやすることで簡単にファイルの変換ができます(コマンドラインって言うらしいんですが正直言い方を変える理由がよく分からなかったです)。

さて、これでSVGをPDFに変換できれば\mathrm{Lua}\LaTeXで直接貼れます!

inkscape --export-latex=Emblem_of_Kanagawa_Prefecture_gaming.pdf Emblem_of_Kanagawa_Prefecture_gaming.svg

これで変換を試みたところ

WARNING: unknown type: svg:animate

なんとピンポイントにanimate要素なんか知らねえと言われました。悲しい。

蛇足1

困った時は

inkscape -?

で、英語のヘルプが出ます。英語の勉強をしておくことで仕様が変わった時でも柔軟な対応が可能です。

蛇足2

パスを通してあるので

inkscape

と打つとGUIInkscapeが起動します。 コマンドプロンプトから起動したい時には有用です。

課題

\LaTeXにアニメーションのSVGを直接貼れなかった訳ですが、\LaTeXに直接貼れる\mathrm{Ti}k\mathrm{Z}にもアニメーションの機能があるため、SVGをうまいこと\mathrm{Ti}k\mathrm{Z}に変換できれば実質貼れそうだなあと思いました。

勉強するのが面倒くさいので誰かやってください。うっかり勉強して神奈川県章が七色に光るPDFができたら、また記事にするかもしれません。

おわりに(という名の自分語り)

いかがでしたかを茶化しておいて薄っぺらい内容で恥ずかしくないのかよ?課題はありますが改善する気はないです。飽きましたし疲れますからね。texdocで\mathrm{Ti}k\mathrm{Z}のマニュアルを見てみると1300ページ以上のPDFが開きます。高機能なことは嬉しいですが、概要を把握するだけでも苦労するのはどうにかならんかなあと思います。

世の中変わりつつありますが、\TeXはいつでもあなたを待っています。\TeXに興味を持った方はこれを機にインストールを、\TeXを使ったアニメーションの動くSVGをPDFに貼り付ける方法を思い付いた方はぜひともブログ記事をお待ちしております。俺もやったんだからさ

参考文献

アニメーション – SVG 1.1 (第2版) - SVGを開発しているW3Cの仕様書の一部

Scalable Vector Graphics - Wikipedia

svg要素の基本的な使い方まとめ

File:Emblem of Kanagawa Prefecture.svg - Wikimedia Commons

Creative Commons — 表示 - 継承 3.0 非移植 — CC BY-SA 3.0

Wikipedia:Text of Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 Unported License - Wikipedia

Wikipedia:クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植 - Wikipedia

7色の光が織りなす「虹」 国によって見え方が違う? - ウェザーニュース

はてなブログにSVGタグを直接埋め込む - dhrname’s diary

Inkscape 1.0をダウンロード | Inkscape

天地有情 [LaTeX] svg --- LaTeX文書にSVG画像を含める方法