送電の効率

(おことわり:私は電気と鉄道をちょっと知っているだけの知ったかぶりピチピチお兄さんです。その辺を考慮してもらえるとめちゃんこありがたいです)

送電損失63%(疑惑)

TweetDeckって便利ですねえ。TweetDeckは検索結果をカラムにTL表示できる機能があります。要するにツイートの検索結果を常に表示してくれる機能です。今は「送電」「ホームドア」の単語を検索しています。

「送電」を検索するきっかけは確か千葉の大規模停電だったかと思います。ついったらんどで暇さえあれば「送電」で検索することが日課になりました。

そんで思わずびっくりしたのがこちらのツイート。

https://twitter.com/eco_katsu_bot/status/1183217899642601472

え、送電線は送電中に半分以上も熱に変わっているの…?????という途轍もないボケをかましています。現実にはそんな訳はなく、一般的には送電損失は5%と言われます。

www.tepco.co.jp

2018年度の東電管内では送配電損失は4.2%でした。上のbotは数値だけ見るとトンデモな情報を流しています。

どうしてこんなことに?

推測ですが、火力発電の熱効率も含めた数値を示したかったのだと思われます。ただし、それを考慮しても正確性に欠けます。

www.tepco.co.jp

日本の火力発電における熱効率は44.1%で、東電管内限れば49.7%です。日本の送電損失を5%、東電の送電損失を4.2%と仮定すると、日本は41.895%、東電は47.6126%の熱効率になります。

なお、これは火力発電のみの話ですので、熱を使わない水力発電太陽光発電も含めるとさらに熱損失は総合的には低下します。

損失が63%ということは効率が37%なのですが、日本平均はそれを上回っていますので、正確性に欠けた表現と言えます。

悪質な点

このアカウントの悪質なところはbotであることです。同様の情報を何度も流しています。最も古い確認できたツイートは2017年1月7日のものです。

https://twitter.com/eco_katsu_bot/status/817359482858573825

ついったらんどには様々なbotが存在しますが、正確性に欠ける情報を垂れ流しているbotは悪害です。もちろん管理者の表示はありません。つまりはこちらがいくら精度の高い情報を出そうにも、botは訂正もせずツイートしてきます。

出来ればこういったbotの情報を鵜呑みにしないことが大切ですね。

おわりに

このbotに限らず送電損失を多く見積もっている人が見受けられます。「送電効率は95%!!!!!!!!!!!!!!!!」はよく覚えておきたいものです。

おまけ

tumblrに詳細に書かれたものがありました。

エコ活blog - おうちでCO2削減 — 電子レンジとガスコンロ、どっちがエコ?

ガスコンロの火力は取扱説明書によれば「最大3kW」です。まるで電気の単位みたいですが、それに相当するエネルギーを炎として出力しているということです。

W(ワット)は仕事率[J/s]の単位です。一応義務教育の範囲です。

CO2排出量:0.024立米 x排出係数2.21kgCO2/立米≒0.05kg

キレそう。

 

 

飛ぶことは恥ではない

(おことわり:私は飛行機の専門家でも飛行機に詳しい人でもありませんので、その辺を考慮して読んで貰えるとめっっっっっっっっっちゃありがたいです)

 

9月下旬に国連でスピーチした北欧の少女が今に至っても話題になっています。

www.nikkei.com

環境負荷の大きい飛行機を使わないためにアメリカ西海岸からスペインまでの移動に困っているらしいです。

さて、この少女のスピーチをきっかけに「飛び恥」という訳語がNHKなどから報道されてきています。

www3.nhk.or.jp初めはNHKが勝手に作りだした単語かと思っていましたが、flygskamという英語を訳したものみたいです。

togetter.com

blog.goo.ne.jp鉄道が環境負荷の小さい乗り物として注目を集めるのは、車内設備や地上設備を見て日々gfffしている鉄道ウォタークとしては嬉しい限りです。私もインバータや永久磁石同期電動機に注目し始めたのは環境問題がきっかけですし。鉄道が今以上に栄える姿は見てみたいです。

しかし、本当にそれで良いのでしょうか?他の交通機関から鉄道を利用することが環境対策になり得るのでしょうか?

 

鉄道に有利な面

まず、鉄道は他の交通機関と比べて何が利点なのでしょうか?一般的には以下の点が挙がります。

  • 時間通りに運行する(定時性)
  • 大量の輸送力がある(経済性)
  • エネルギー効率が良い(環境性)

大きくはこの3点です。

今回は経済性とそれに派生する環境性について呟いていきます。

経済性

鉄道はバスや飛行機と比較して大量輸送に長けています。これは車両を増結・解放が容易であることが可能にしてます。

都市鉄道に観点を置くと、毎日何万人という旅客を輸送しています。首都圏の路線で1時間の間に最も輸送量の多い路線は中央快速線で81,560人です。民族の移動かな?

https://www.mlit.go.jp/common/001245347.pdf (国土交通省:東京圏における主要区間の混雑率)

これをバスで輸送すると907台のバスが必要になります。等間隔だと4秒に1本バスを出さないと間に合わない計算です。全て普通自動車で輸送するとさらに悲惨なことになります。これだけの人数を道路だけで捌くのは無理難題です。大量かつ高速の輸送が可能であるのは鉄道の特長ということになります。

高速鉄道に観点を置くと、日本には新幹線が大動脈を文字通り担っています。東海道新幹線は16両編成で定員が1323人と飛行機の定員の2倍を輸送できます。一列車の輸送力が高いことは都市鉄道でも明白ですが、高速鉄道の利点としては飛行機と比較して続行運転が容易であることも挙がります。高度な設備(ATCやホームの増設)を導入することで最大毎時15本もの運転を可能にしています。飛行機にこれほどの本数を同一路線を運行することは難しいです。

都市鉄道にせよ高速鉄道にせよ、多くの人を運べることが利点です。鉄道は乗客の一人一人から運賃を徴収するため、多くの人が乗る場合には一人当たりのコストが下がりやすくなります。つまりは運賃を安く設定できることになります。これは都市鉄道に顕著に現れます。日本の多くの大手私鉄は2kmほど移動するのに200円もかかりません。バス、タクシーではこれほどの廉価での移動は難しくなります。

経済性から派生する環境性

ここまでまどろっこしい話を続けてきましたが、ここで交通機関二酸化炭素に関する資料を思い出して下さい。

www.mlit.go.jp

二酸化炭素の排出量についての棒グラフはよく見かけるものかと思いますが、この棒グラフの単位に注目します。

[g-CO2/人km]

 うわっなんだこの表記…なんかよく分からない単位をしていますが、日本語で言うと「1人の人が1km移動する時に交通機関が排出する二酸化炭素の量」です。はい、「1人当たりの量」なんです。「一人が出す量」です。

グラフにおいて、鉄道は圧倒的に排出量の少ない交通機関と読み取れますが、それは大量輸送が可能であるために一人当たりの排出量が圧倒的に少なく見えるだけなのです。1列車当たりだと比較的少なくなる、という方が正確と推測します。

蛇足1

1台で乗る人数が少ない乗用車は一人当たりの二酸化炭素の排出量が多くなる、というのは当たり前の話になります。

蛇足2

本当は1便(1列車)当たりの定量的な比較をしたかったのですが、鉄道と飛行機は車両・機種によって定員がバラバラで、あまりにも客観性に欠けてしまうために断念しました。

蛇足3

1列車当たりの二酸化炭素の排出量でも鉄道の環境における優位性は揺らぐものではありません。電動機の効率は9割を超え、回生ブレーキで電力を有効活用しているためと推測します。

飛行機は環境に悪いのか?

さて、本題です。環境少女は欧州からニューヨークまでの4800kmをヨットで渡りました。

www.bbc.com

2週間前の出発時、

えっそんなにかかったの?

飛行機の直行便では8時間もあればニューヨークから欧州のあらゆる都市に飛べます。PRも兼ねているのでしょうけれども、欧州とアメリカの移動で2週間もかかるようならハッキリ言って使い物になりません。仮に一国の大統領や社長が大西洋を横断する際に、2週間かかるヨットと半日かかる飛行機の選択肢があるならば、ほとんどの人が飛行機を選ぶと思われます。

飛行機は世界に必要な物

ところで、エアコンって便利ですよね。夏場は涼しく、冬場は暖かくしてくれます。ここでなんか知らん人から「エアコンは家庭で最も二酸化炭素を排出するので恥」と言われたらどうでしょう?少なくともツイッタランドでは間違いなく社会的に殺されるかと推測します。

飛行機は環境に良いか悪いか、の前に多くの路線では地域・国にとって必要なものではないかと思います。「飛び恥」は欧州で流行りを見せていますが、欧州は鉄道路線が多く走っているために飛行機の代替が比較的容易でしょう。しかし、他の地域にそれが可能でしょうか?超長距離の大陸間移動で飛行機以外の手段があるのでしょうか?手段があったとして、その手段は代替が容易なのでしょうか?

恐らくないでしょう。船にしたって時間がかかり過ぎるんですもの。ですから飛行機は必要なものなのです。エアコンと同じです。

日本はどうあるべきか

日本人なのでヨーロッパで流行っているなら日本も乗るべきか反るべきかという話をしたくなってきます(主語がでかすぎる)。ここでもう一度国土交通省の資料を見てみましょう。

www.mlit.go.jp一番上の図では運輸部門の二酸化炭素の排出量が載っています。これは日本全体で運輸部門が排出している二酸化炭素の割合です。飛行機の二酸化炭素の排出量は…

航空

1,040万トン [4.9%]

 5%とさほど多いものではないですね。

自家用乗用車

9,850万トン

[46.2%]

うおっすっげ…

気にするべきは自動車、というのは言わなくても分かりますね。

蛇足

ここで「自家用車は恥」なんて言ってしまば袋叩きです。バス・鉄道が使えないレベルの利便性であったり、公共交通機関が全く存在しなかったりする地域は山ほどあります。自家用車もまた必要な物の一つです。

出来るだけ利便性を落とさずに車の利用を減らす試みはあります。モーダルシフトパークアンドライドなどなど…。そういった行政の取り組みが環境負荷の小さい社会づくりになっていきます。

結論

  • 鉄道も相応の環境負荷はかかる。
  • 飛ぶことを恥じたって割合考えたら大した量じゃないから気にすんな。

どうしても気になる方

日経が良い資料を作っています。

vdata.nikkei.com

700km - 1000kmで鉄道利用と飛行機利用が拮抗しているのが分かります。この状況は例として挙がっている東京 - 広島間のシェアとほぼ同様です(鉄道というより新幹線ですねこれ)。シェアが拮抗しているところはどちらを選んでも利便性はほぼ同様という例が多いです。もちろん、出発地や目的地によって利便性は変わってきますが、ちょっと不便だけど鉄道!というなら環境負荷は比較的軽いものになります。

利便性が皆無だとかえって環境負荷が大きくなる場合もあります。飛ぶことは恥ではありません。出来る範囲で変えてみる。それが世界を変える一歩なのではないでしょうか。

 

おまけ

記事をダラダラ書いている間に環境少女の支援が決まったそうで。スペイン政府は寛大だなあ。

www.sankei.com

電気自動車(EV)などで移動していた。

 (鉄道で移動しなかったのか…)

千葉の大規模停電について2

イッタランドで電力に関することを検索しては検索結果に頭痛が痛くなる日々を過ごして初投稿です。

 今回は無印記事での補遺に近いものです。特に真新しいことは言ってません。

停電が長期化した原因

多方面から参考になる記事が出ていますので、そちらのリンクを貼り付けておきます。

news.yahoo.co.jp

comemo.nikkei.com

前回の記事でも言っているように、送電と配電は別物で、今回の停電の長期化は「配電が中心」です。送電でも鉄塔の倒壊など事故は起きていますが、事故点の開放と迂回により、送電網による停電長期化は回避しています。

 

風圧荷重について

停電長期化の一因として暴風により配電線の電柱が倒壊したことが挙げられます。報道でもよく取り上げられるように法律では風速40m/sの風圧荷重に耐えられなければならないように設置しなければなりません。この法律を基に「大規模停電は想定内」と論ずる方を見かけたのですが、風速40m/sの風が吹けば電柱は倒壊するものなのでしょうか。

denchuu.net平成30年台風21号の関西電力管内で発生した大規模停電の際に書かれた記事が参考になります。

どのような構造物もそうでしょうが、決められた設定値ギリギリで設計することは
まずない。電柱も然り。風速41m/sになれば折損するかと言えば折損しないのである。
電柱の風圧に対する安全率(折損に対する安全率)は関西電力は2.0を基準としている。

推測ですが、東京電力もなにかしらの安全率を取って設置していると思われます。また、別の法律では木柱では1.1-1.3の安全率が取られ、鉄柱・コンクリート柱では基礎に安全率2が取られています。

当然ながら、観測された風速と電柱に吹いた風速は違ってきます。

即ち、風速40m/s以上が観測されたからといって、その地域の電柱がすべて折れるとは限りません。

 

これからの対策

既に公官庁で台風による停電対策が検討されています。

www3.nhk.or.jp

電線地中化

おそらく多くの人が思い付く対策でしょう。いわゆる無電柱化です。しかし、無電柱化の推進には資金面での課題があります。

資金面での課題

nlab.itmedia.co.jp

場所による方式の違いもあり一概にはいえませんが、3倍~10倍高くなり、1キロあたり1~5億円必要です。

 土木工事が電柱部分のみだった架空電線とは違い、全線にわたり土木工事を行う地中電線はどうしても高くつきます。

この費用を、国や地方自治体、事業者(電力会社など)が3分の1ずつ負担する方式が主流です。

電力会社だけでなく自治体も負担する方式が主流ですので、財政が厳しいところでは容易に進まないでしょう。また、多くは道路に埋設しますから、道路の所有者(多くは自治体)の調整がつかないと工事は始められません。全線を地中化する場合には、おそらく何十年度もの歳月がかかります。

電線地中化は万能か

架空でも地中でも一長一短です。どちらの方式も万能ではありません。個人的な意見を述べると、現時点では地中の方が利点が大きいと思っています。理由は大きく2つあります。一つは暴風だけでなく鳥害(巣作りなど)・雷害(雷による異常電圧)・塩害(塩分による絶縁性能の低下)・着雪(電線に雪が付着)に効果のある対策であること。もう一つは巨大地震の際に倒れる電柱が存在しないことです。電柱が道路に倒れていると復旧の前段階である救助すらままなりません。他の地域から非常用発電機を確保するためにも、まずは交通の確保が優先ではないかと思います。

もちろん地中線にも欠点はあります。ですから、反対するよりかはその対策を考慮するべきではないかと思っています。

地上変圧器

蛇足です。無電柱化を施した地域では変圧器を車道寄りの歩道に置きます。つまり車がウッカリ歩道に突っ込んでしまうと変圧器を破壊する可能性があります。変圧器は結構お高い物ですから、弁償ともなると高額になります。運転支援の機能が増強されているとはいえ、無電柱化した地域を運転する際には特に注意が必要です。

規格の改訂

現在は風速40m/sの風圧荷重に耐えられるように定められている規格を、さらに上げようというものです。前述のように無電柱化は全線においての達成は難しいですし、仮に法律などで架空電線の撤廃を決定したとしても、私が生きている内に達成できるとも思えません。

無電柱化の推進と合わせて、地中化の難しい地域ではより風圧荷重に耐えられる電柱を建てることが現実的ではないかと思います。

ただし、これは風圧荷重により電柱の倒壊を防ぐ手段で、今回の一因である倒木による停電には意味がありません。「防災」よりかは「減災」の手段であることを覚えておきましょう。

治山

上記の様に、倒木が停電長期化の一因です。電線付近で倒木が起きないように対策はするべきですが、私は林業の専門家でもありませんので、なんとも言いようがありません。

送電網の強化

停電長期化とは無関係ですが、倒れた鉄塔を見て送電網の強化を論じる方々を見かけます。鉄塔の保守整備をこれから強化するか、地中送電線にするかなどの対策は必要ではありますが、新たに送電線を引くことには疑問を感じます。

何度も言うように送電線鉄塔の倒壊と停電長期化は無関係です。

www.sankei.com12日(台風通過の3日後)の時点で迂回送電により鉄塔倒壊による停電はほぼ解消しています。また、275kV以上の系統図だけを見て批判する方もいますが、今回倒壊したのは66kVの鉄塔です。66kVの送電線は房総半島を一周し、加えて縦断するものもあり、素人目線だと十分な送電網と思います。

全くの無駄、とまでは言いませんが、地中送電線化や配電網の充実に資金を回す方が費用対効果が高いのではないかと思います。

余談1

基幹系統の送電線の地中化に反論する方を見かけましたが、新京葉変電所から新豊洲変電所までの送電線、新京葉線は500kVの地中送電線です。現役で活躍しています。

余談2

東京湾に基幹系統送電線を新設して円周状とする論は面白いと思います。目ん玉飛び出るほどの金額になると思いますが。

配電網の強化

おそらくこちらも重点に置かれると思います。配電網は樹枝状方式や環状方式など様々な方式があります。

e-sysnet.comそれぞれが費用対効果を検討して方式を決定していきますが、千葉県の近郊・郊外ですと供給信頼度が低い樹枝状方式を採っていた地域も多いだろうと推測します。供給信頼度の高い配電方式に変更したり、迂回電線路を新設したりなど様々な対策を取れます。ただし、家の前の電線が切れてしまったり、迂回電線路全てが倒木で配電できなくなったりすると停電は不可避ですから、「減災」に近い対策です。個人的に費用対効果は高いと思っていますが、こちらも万能策ではないことを考慮するべきとも思います。

 

おわりに

今後取られるだろう対策やネット上で見かける論をざっと取り上げてみました。他にも興味深い事象が飛び交っていますが、千葉の大規模停電に留まらない話になりますので、別記事で楽しく(?)述べていこうかなと思っています。何しろ私の選挙区から選出された国会議員が環境大臣になって色んな発言してますからね。

長い説明でしたが、最後にこれだけは覚えて帰って、どうぞ

・送電と配電は別物。深刻化した原因は配電

・すぐに打てる対策の多くが「減災」。万能策は無いに等しい。

 

それではおやすみなさーい。

千葉の大規模停電について

台風とその停電により被害に遭われている方々にお見舞い申し上げます。

 

千葉では停電の被害が大きく事態が深刻です。連日報道され関心を寄せる方が多くいますが、中には電力について勘違いしている方を見受けます。この記事では主に勘違いされているだろうことについて私が思うことを記述しています。なお、私は送配電工学の専門家ではありません。大学で受けた講義や教科書、電力会社のwebページ、報道などを参考に述べていきます。

 

長引く停電は送電網が原因なのか

送電網と配電網

「送電網」と「配電網」は別物なのですが、多くの方が配電網のことを送電網と言って勘違いが蔓延しています。送電を「電気を送ること」と解釈すると送電網でも間違いはないのですが、電気事業連合会では以下のページでこのように書かれています。

 

電気が伝わる経路 - 送電のしくみ | 電気事業連合会

 

発電所−変電所間などを経由する線を「送電線」と呼びます。変電所(変圧器)から各家庭へ電気を配る線を「配電線」と呼びます。

 

ここでは書かれていませんが、変電所から変電所までをつなぐ電線も送電線と呼ぶのが電力業界では一般的です。

また、工学的にも送電工学と配電工学はかなり別物です。例えば、配電工学では経済的に電気工作物(電線や変圧器など)を配置するために需要率・負荷率・不等率を計算するのですが、送電工学でこれらの計算をした覚えがありません。

停電が長引いているのは変電所から家庭に電力を配る配電線の電柱が折れたり倒れたりしていること、倒木が電線にかかり配電が出来ないことが主な要因です。つまり、「長引く停電は送電網が原因」は正確には誤りで、「長引く停電は配電網が原因」が正確です。

余談1

新明解国語辞典で「送電」を引いてみたところ以下の記述がありました。

電報(電気)を(第一次変電所まで)送ること。

てっきり「電気を送ること」としか書いてないだろうと思っていただけに、正確な記述に驚いています。

余談2

個人的な印象ですが、配電網のことを送電網と書いてあるツイートの多くは配電網と読み替えたとしても不正確なものが多いと感じます。

 

倒壊した鉄塔

では暴風により倒壊した鉄塔とは何だったのでしょうか。鉄塔は紛れもなく送電線の設備です。長引く停電とは関係ないのでしょうか。

その答えは「関係性は薄い」です。

www.sankei.comイッタランドでは「東電への死体蹴り」として一部の方から叩かれていた産経の記事ですが、短い記事としてはよく出来ています。特に「台風15号による停電長期化のしくみ」の図が停電の現状を把握する上では理解しやすいものとなっています。

倒壊した鉄塔は迂回して送電できるため影響が小さくなっています(というより迂回が出来なかったら被害はこんなものじゃ済みません)。迂回と言うのは網目状に電線が配置されている場合に、開閉器(要はスイッチのようなもの)を操作すること、またはジャンパー開放することにより、送電できない電線を切り離して実現します。一部の鉄塔に開放できるものがあります。

ただし、どの時点で迂回したのかが分からないため、短時間での停電がどの程度抑えられたのかは分かりませんでした。少なくとも現在の停電と鉄塔の倒壊には関係性が薄いと思われます。

 

以上の2点から2019年9月16日現在の大規模停電について「送電網との関係は薄い」と言えます。

 

倒壊した鉄塔(送電線)の役割

少々蛇足ですが、倒壊した鉄塔が吊っていた送電線の役割について述べます。というのも、的外れな意見を目にしたからです。

まず、送電線には基幹系統と地域供給系統の二種類があります。基幹系統は発電所から主要な変電所まで送電する系統です。主に275kV以上の超高圧、超超高圧で送電します。地域供給系統は主要な変電所から配電変電所(変圧して配電線に接続する変電所)まで送電する系統です。主に66kV、154kVの特別高圧で送電します。どちらかといえば基幹系統に事故が起きると大規模停電などの影響が起きやすくなります。また、どちらも網目状に展開する地域が多いため、事故が起きても迂回するなどして停電しない場合もあります。

東京電力は66kVの地中送電線以外の送電線の路線図(系統図)を公表しています。(PDF注意)

http://www.tepco.co.jp/pg/consignment2/images/500-275kv.pdf

http://www.tepco.co.jp/pg/consignment2/images/154kv.pdf

http://www.tepco.co.jp/pg/consignment2/images/66kv.pdf

 

倒壊した鉄塔の住所は千葉県君津市長石です。付近には内房変電所と新木更津変電所があります。内房変電所は君津共同火力発電所から送電される154kVと地域供給系統の66kVを扱っています。新木更津変電所は房総変電所からの275kVと基幹系統の500kV、富津火力発電所からの500kVを扱っています。新木更津変電所に関連する送電線ですと他に迂回する送電線が少ないですから、事故が起きていると深刻です。

内房変電所に関連する送電線か新木更津変電所に関連する送電線か、見分けるには送電電圧が違いますから、電圧が分かれば影響する範囲も分かってきます。鉄塔から送電電圧を見分けるには碍子の個数で大体分かります。碍子(がいし)とは電線と支持物を絶縁するためのものです。鉄塔に白く連なって接続するものが碍子です。以下のwebページに碍子についての説明があります。

www.chuden.co.jp絶縁性能を向上させる際には碍子を直列に増やしていきます。つまり電圧が上昇すれば碍子を直列に接続する数も増えていきます。66kVでは5個以上、154kVでは10個以上、500kVでは24個以上が必要になります。なお、並列で碍子を増やすのは機械的強度(電線の引っ張りに対する強度など)を増強させるためのもので、絶縁性能を上げるためではありません。

倒壊した鉄塔の碍子まわりを撮影した写真は以下のwebページにあります。

www.chiba-tv.com

碍子は一連当たり7個ですから66kVであることが分かります。66kVの系統図を見ると内房変電所からは複数系統があること、他の変電所から系統連携が可能なことから、事故点の遮断と迂回で鉄塔倒壊による停電を最小限にできます。

上述の通り、迂回して送電していますから、鉄塔倒壊と大規模停電は2019年9月16日現在は関連性が低いと言えます。

 

原子力発電との関連性

何度も言うように9月16日現在の大規模停電は配電線によるものですから、原発が稼働していても停電しています。ただし、原発稼働によってあがっていた利益を逃していたことにより改修が出来なかったという指摘については、肯定も否定もできません。報告書ができない限りは公衆には分からないと思います。少なくとも「原発が稼働していたら停電軒数は少なかった」と断ずるのは避けるべきと思います。

電力は足りていたのか

では、電力は足りていたのか。と言われるとそれも微妙です。

www.nikkei.com

台風の直後は発電所が止まっていたことに加え、気温が高かったために電力融通を受けていました。この時の電力使用率は95%にまで上っています。

でんき予報|東京電力パワーグリッド株式会社

ここ数日は猛暑が納まり電力使用率が8割前後です。この涼しさは不幸中の幸いです。仮に猛暑が続き、いずれかの発電所が停止となった場合には最悪ブラックアウトしていたかもしれません。電力融通も北電と関電からで、どちらも融通には限度の低いものです。(2019年9月22日修正:消し忘れていた文を削除)

大々的な節電要請や台風とは関連性のない大規模停電が無かったからと言って「電気が足りていた」と言われるのにはどうも納得がいきません。

 

ダラダラと述べてきましたが、これにて終わりです。トンデモなものを見かけたらまた書くかもしれませんが、それが無いことを願うばかりです。最後に復旧作業にあたっている電力会社・電力工事会社の無事と被害に遭われた方々の復旧復興を願ってこの記事を終了とします。

京浜急行電鉄神奈川新町第一踏切道の踏切事故について1

まずはこの事故により亡くなられた方へのご冥福をお祈りすると共に、怪我を負われた方々へお見舞い申し上げます。また、事故復旧に携わりました方々に感謝申し上げます。

 

さて、ここでは踏切事故の様々な観点について思ったことを書いていきます。まとまりのない文ならTwitterの方が良いのかもしれませんが、こちらで記録していきます。ナンバリングしてますが、多分続きは書かないと思います。書く気力があれば書くかもしれません。前の記事同様に手元の文献が少ないので、正確性に欠けます。ご了承ください。

 

この事故は仕方がなかったのかという話

120km/h運転について

京急の代名詞の一つとも言える120km/h運転、運転開始の1995年当時では画期的なものでした。現在では各社各路線とも車両・設備改良が進み、珍しいものではなくなりましたが、120km/hでの速達サービスは現在でも健在です。

この踏切事故の反応の中に「120km/hで運転していたのだから接触するのも仕方なかったのではないか」という言説を見かけますが、私は否定します。当然ながら事故は起こらないように対策をするものです。「120km/hなら仕方ない」のならば、速い速度が事故の原因と言っているものです。どの程度の速度なら事故は起こらないのでしょうか。極端なことを言えば、京急は踏切を通過できなくなってしまいます。

現在では廃止されていますが、2002年までは「600m条項」というものがあります。

ja.wikipedia.orgざっくり言うと「非常ブレーキをかけて600m以内に止まれるようにしなさい」というものです。当然ながら京急の車両も例外なく120km/h運転時でも600m以内に止まれるようになっています。120km/h運転のために非常ブレーキの性能向上の改造を施した車両(増圧ブレーキ)もあります。このように120km/hに速度向上する際には踏切事故が起こらないよう施策が取られています。この時、「120km/hなら仕方ない」だとこの施策は無意味なものになりますので、国交省としては120km/hで認可を出すわけにはいかなくなります。

ですから、「120km/hなら仕方ない」なんてことは一切ありません。

見通しについて

下り線の子安から神奈川新町にかけては緩い曲線を描き、該当踏切から600m離れた所から該当踏切までは直接見えません。このことから「見通しが悪かったので仕方ない」という言説を耳にしますが、私は否定します。前述の通り、当然ながら事故は起こらないように対策をするものです。先ほどは車両設備について述べましたが、今度は地上設備についてです。踏切には事故対策として障害物検知装置(障検)と特殊発光信号機(特発)、非常停止ボタンが主に設置されます。京急では業務用を除いてすべての踏切に設置されています。この記事では特発について述べ、障検と非常停止ボタンについては省略します。

京急では特発をほとんどの踏切で3機以上設置しています。踏切至近に「近」、少し離れた所に「中」、離れた所に「遠」を設置します。「遠」の見通しが悪い区間では設置数を増やし、「遠1」「遠2」と番号を振るようになります。また、他社ですと短い区間に複数踏切が設置されている所では特発を1機にまとめることがありますが、京急は踏切の間隔が短くとも踏切ごとに最低でも3機設置します。結構贅沢な使い方をするんですよね。

さて、該当踏切では遠中近の3機の特発が置いてあります。遠を目視する際は該当踏切を見ることはできませんが、発光していたのを確認すれば事故を防ぐか、事故が発生しても今回のような悲惨な被害を出すようなことはなかったと推測します。つまり遠の特発があるので、「見通しが悪かったので仕方ない」は通用しなくなります。また、遠の特発そのものの見通しが悪い場合も遠2の特発を置けば解決しますので、総合すると「見通しが悪かったので仕方ない」なんてことは一切ありません。

 

 

本当はもっといろんなことを書きたかったのですが、夜も更けてきたのでここまでです。台風による被害が少ないことを祈るばかりです。

「SiC素子」という表記について

(気さくな挨拶)

 

こんにちんちん!社会人になって低次元な悩みを抱え続けているZweiglinieだよぉ

空元気しないとやってらないクソザコナメクジメンタルだからね、しょうがないね

 

鉄道車両の制御装置で、近年の流行とも言えるのがSiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイド)を材料に使用したインバータの適用である。

 

Q.インバータって何?

A.半導体のなんかすごいきじゅちゅでなんかすごい制御が出来たり出来なかったりするナウでヤングなマジヤバイ直流から交流に変換する装置

 

補足:この筆者は電気電子工学科を卒業しているにも関わらず、\SI{50}{\mm}ぐらいしか電気技術を理解していません。要はバカです。誤謬等がありましたらバカでも分かるように、赤ちゃんの肌をバブバブするように、優しく反論してもらえるととても助かります。ああ、赤ちゃんに戻りたい。戻れない。 p.s. 今手元に半導体関係の参考文献がない

 

所謂鉄オタと言われる一太刀では、新型車両や旧型車両の制御機器更新車が登場すると、インバータにSiCが使われるか使われないかが話題の中心になると言っても過言ではないと思いたいぐらい話題になります。知らなかったら覚えてね。

 

Q.SiCって何がすごいの?

A.ここにぜんぶかいてある。次世代の電力社会を担う「SiCパワー半導体」が、鉄道車両用インバーターで実用化 | NEDOプロジェクト実用化ドキュメント

 

Q.読むの面倒くさいんだけど

A.SiCにすると損失が減る。軽くなる。小さくなる。

 

んで、利用者数とか収益とか色々な面で世界一らしい東日本旅客鉄道株式会社の新型車両、E235系にもSiCが使われているんだ。

https://www.jreast.co.jp/press/2018/20180902.pdf

上のリンクは横須賀線への導入計画を発表した時のPDFね。全角数字滅びてくれないかなあ。一番下には旧型車両との比較も乗っているぞ!まあなんて優しい!日付に半角数字と全角数字を混在させる文化滅んでくれないかなあ。よっ世界一!!!!!!!!!!!!!!!!!111111111111111111111111

 

Q.じゃあ旧型車両は何使ってたの?

A.きゅうりのキューちゃんを使ってたよ、旧型車両だけに

 

上のPDFによると旧型車両はIGBT素子を使ってたんだそうで。で、新型車両は…SiC「素子」…?

 

は??????どうしてIGBTとSiCを比較しているの????????バカだから理解できないんですけどぉ?????????????

 

Q.急にどうした

A.IGBTっていうのは絶縁ゲートバイポーラトランジスタInsulated Gate Bipolar Transistor)のこと。半導体は基本p型半導体とn型半導体の組み合わせなのだが、IGBTはその組み合わせの一つ。一方でSiCは材料名で、組み合わせの名前と材料名で比較していることがちゃんちゃらおかしいである。分かりにくく例えるならば、料理名と食材名で比較している同然である。カレーの話をしている時に素晴らしいお米!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!なんて言わんでしょ?カレーの話だよカレー!本来ならば材料名の比較として、Si素子とSiC素子として表記するべきである。

Q.コイツ本題になったら流暢に喋りだしたな

 

Q.そういや素子ってなによ

A.要は部品みたいな意味。素子(そし)の意味 - goo国語辞書

 

つまりSiC素子というのは、SiC(を使っている)素子という意味である。一方でIGBT素子は、IGBT(という組み合わせの)素子という意味。ね?比較する意味が分からんでしょ?あと部品の話なのに材料の話をするのも違和感あるよね。

 

Q.新しい技術ってのが分かるから別に良くない?

A.不正確でも分かれば良いで済むなら事故なんて起きないさ。先日も異音が発生しているのに「何かあったら止めてくれるだろう」で名古屋まで運転した重大インシデントがあったばかりじゃないか。分かるだろうは誤解を生むんだ。でもこの分かりにくい文章は誤解なく伝わってほしい。

Q.流れるようにブーメランを投げるな

 

SiCとIGBTが比較する起源でも分かれば理解できるかなあと思うものの、面倒なんで調べておりませぬ。誰か調べて。私に教えて。分かりやすく。

 

で、誰から何の説明もなくSiC素子という表記は鉄道会社や鉄ウォータに限らず、果てはインバータを製造しているメーカまで使い始めている。なんなんだこれは。

 

んでんで、他に懸念していることとしては以下のことがある。もう書くのが面倒になってきたから箇条書きするにゃん。

  1. 半導体技術を新たに学習する人の壁になる
  2. デマの流布
  3. 新たな材料名から存在しない素子名が生まれる
  4. 半導体技術を新たに学習する人の壁になる
  5. 以下省略

まだまだ鉄道車両用に製品化されていない半導体の素材はあるんで、登場するたびに素子素子言っているようだと、学習者を阻止阻止するんじゃないかと心配しているんですよね。例えば究極の半導体素材なんて言われるダイヤモンドを、ダイヤモンド素子(化学式だとC素子?)なんて存在しない物を作りだしそうで怖いんですよ。

 

さてさて、もう書くのが面倒になってきた億劫億劫…億劫がおっぱいになったらいいのに…

IGBTとSiCの比較なんて意味が分からないよな!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ^^^~~~~~~~~~~~」という文章でしたとさ。おしり。

 

補遺1:SiCは炭化ケイ素の化学式のため、大文字と小文字は区別される。sicやSicの表記は不正確である。

 

 

 

 

初投稿です

twitter.com初めまして、主に上記のTwitterで趣味的に活動しているZweiglinieという者です。

転生前のアカウントではYahooブログを持っていたのですが、更新するのが面倒になり、Twitterだけやるようになり、パスワードを忘れたり…加えてサービス終了が決定打となって、思春期に作ったブログは闇に葬り去ることになりました。その代替としてブログでもやろうかなあというのが消極的な動機です。あとは自己顕示欲を満たすためという理由も。

 

で、Twitterというのは元々は呟きを投稿する短文ブログなので、長文を書くには向いていないんですよね。先のアップデートで改善されつつあるものの、それでも長文は書きにくいです。(一連のツイートを一部分だけ恣意的に拡散してデマになったり、誤字脱字を修正できなかったり…ゴニョゴニョ…)140文字に制限されるのは面倒!ならいっそブログ作ってそっちに書いてしまおう!ということで、こちらが積極的な動機となります。私のTwitterを見たことある方なら、極稀に真面目なことを長文で連ねているツイートを見かけるでしょう?あんな感じのをブログに載せるつもりです。なので、(知っている方がいるかどうか分かりませんが)Yahooブログ時代とは結構毛色が違くなると思われます。旅行の写真をベタベタ貼るだけの投稿は多分Twitter、下ネタも多分Twitterです。専らチョット詳しい交通や電気工学などなどを語るだけになります。

 

ただ、ブログを作りたいと思っただけで、はてなの事は碌に調べず開設しました。(退職エントリーやLaTeXを調べるときによく見かけるなあと思ってたぐらい)そのため、はてなのシステムをよく理解していません。はてなブログ初心者ですが、どうぞよろしくお願いします。